まず最初に断っておくが、今回の記事の内容は非常にショッキングでセンシティブでバイオレンスで人によっては読むと謎の体調不良に襲われたり湿疹が浮いてきたり可能性がある。そのため昆虫(蛾なんかは特にねぇ)が苦手だったり地獄からの使者みたいに思っている人はブラウザを閉じるか戻るボタンを押す、もしくは覚悟を決めて読んでほしい。(できれば後者を選んでほしい)
ここ1週間くらいで仕事が滅茶苦茶忙しくなってしまい平日は全くブログを更新できない状態が続いていたので、前回の投稿から随分時間が空いてしまった(言い訳)
ところで最近札幌では「クスサン」という大型の”蛾”が大量発生しているというニュースを見た。こいつは去年のちょうど今時期に主に道北くらいの地域で同じく大量発生し、ニュースやインターネットで報道されるほど話題になった。そして某生物系Youtuberが大量のクスサンを拝みに遥々内地からやってきた。
冬になると道民はまるで何事もなかったかのようにその「クスサン」の存在を忘れていたのだが、ここ数週間の間で、お次は札幌市内の主に西側の東西線の沿線で発生したらしく話題になっている。
特に地下鉄琴似駅がとんでもないことになっているらしく、その様子を収めた映像には、床も壁も天井もお構いなしに手のひらサイズの大量の「クスサン」が、夜空に浮かぶお星さまのように密集し、まるでここが自分らの縄張りであると主張する様に通路を占拠しているという衝撃的な光景が映っていた。
それを見た瞬間「ぜひ俺もこんな劇的な写真を撮影したい」という衝動に駆られたので琴似駅に行って見たというのが今回の内容だ。
・・・あとクスサンってよく見るとモフモフしてて目がつぶらで結構可愛くない?
そもそもクスサンってなに?
クスサンはヤママユガ科に属する大型の「蛾」の1種だ。ほぼ日本全土に生息しているらしい。
夜に電灯のまわりをうろうろ飛んでいる小さい蛾と違い、ハネを広げると幅10cmを超えて人間の手のひらとほぼ同じサイズになる。
色味はいかにも「蛾」といった茶色で、それぞれのハネの真ん中に目のような黒い斑点がある。本体は細かな毛で覆われていてモコモコとしており、目は黒くパッチリとしている。
幼虫は緑色の太く長い毛虫だ。細い毛がチクチクと生えていて触ると物理的に痛いらしい。
ちなみに幼虫、成虫ともに人間の健康に差し支える毒は持っていないので、触ったとしても直ちに体調に影響はないだろう。ただ、蛾に限らずだけど何らかの病原菌を媒介している可能性はあるので完全に無害とも言い難い。
ちなみにこれらの情報はすべてネットでササッと拾ってきていて、つい10分前くらいに初めて知った。
地下鉄琴似駅でクスサンの激写を狙う
というわけで俺もニュースでみた「ショッキングな1枚」をどうにかして撮影したく、遥々琴似までやってきたわけだ。
ちなみに琴似には職業訓練の施設があって、俺はかなり昔に一時期そこに毎日通っていた。なんだが懐かしい心持になりつつ、クスサンのために駅をうろちょろ歩いた。
ホームから階段を上がって、改札に差し掛かろうと思ったときに早速1匹見つけた。
通路の隅っこのほうにある柱の根っこで、人間に見つからないようにじっと隠れて休憩でもしているようだ。幸い人の往来する導線からは随分離れたところにいるので、踏みつぶされてしまう心配もなさそうだ。
しかしながら駅に到着して1分もしないうちに早速1匹目が目に映ってしまって少々驚いてしまったというか、その反面「これは期待できそうだ」というワクワク感も湧いて出てきた。同時に「事態の大きさ」をリアルに体感した瞬間でもあった。
その後改札からでてしばらく周りを散策して、1~2匹の存在を確認できたが、なかなかどうして件の映像にあった星のような数の群れをお目にかかることができない。「外に出ればもっとたくさん湧いているのかな?」と思ってとりあえず適当な出口に向かうことにした。
出口に向かう途中の通路で、脇にある溝の中でまた1匹発見した。
なかなか大人しい種のようで、スマホを目の前の10cm近くまで近づけても羽をぴくぴくさせるだけでほとんど反応しない。これが蜂やトンボなら後ろから姿をよく観ようとして近づけばすぐに反対側に飛んで逃げていくものだけど、こいつはどうも危機感に疎く逃げる気配を見せない。
真上から顔がよく見えるようにスマホを近づけて撮影。やっぱりこうしてみるとなかなか可愛い。
こちらは出口の階段の途中で見つけた個体。確かにその図体はでかくて階段の端っこの方に居ても結構な存在感を発揮してくる。
フサフサの胴体とクリっとした黒い目がやっぱり可愛らしく思える。
なるほど確かにホームから出口までにここまで大型の蛾が2匹も3匹もお目にかかれるようでは、これは非常なる大量発生の事態と言えるだろう。
とはいえ、自分が期待していたのはニュースの映像で目にしたあの「お星さまのような」衝撃的な事態であって、通路の脇に20歩に1匹くらいのペースで視界の外周に映るなんてものじゃない。もっと衝撃的な有様を右手に包んだスマホでとらえたい。そしてそれをブログにのせて「うわぁ」「気持ち悪い」「地獄の再現だ」「筆者はどこの精神科に通っていますか?」みたいな読者の反応を楽しみたい。
というわけで、地上から件の映像の現場である「3番出口」に向かうことにした。
到着すると出口のすぐのところにこんなものが置いてあった。
白い光を照射するライトだ。写真ではわかりづらいけど、このライトはかなり明るく光を照射する。
この出口の階段の途中にも同じライトが置いてあって、駅のスタッフか、害虫駆除の業者かわからないけど男性が1人その周りで何らかの作業をしていた。
おそらくこのライトの光に大量に集まるクスサンを一網打尽に捕獲してしまおうという計画が動いているのだろう。
それはさておき、3番出口に来てみたはいいものの床を見ても、壁を見ても、天井を見てもクスサンと思われる個体を確認できない。ライトと1人の男性がいい感じに仕事をしているために数が減ったのか、時間帯(この時は18:30~19:00の間くらいだった)が悪かったのかわからないけど、映像にあった「お星さま」のような光景は残念ながら拝見することができなかった。
「なんだかなぁ」と思いながら3番出口の階段を下って帰ろうと思ったら、ちょっとばかり面白い光景を目にすることができた。
少しわかりにくいが、階段の上に1匹、壁の上の方に1匹と合計で2匹をいっぺんに見つけた。
期待していた事態とは随分違うけど、これだけでも確かに「異常事態」と言っても言い過ぎにならないと思ったので撮影することにした。
壁に留まっているいるヤツは位置が真上すぎてあまり近くで撮れなかった。
階段の上に留まっていたヤツ。本当に大人しくてこんなに接写してもピクリともしない。
まとめ
というわけで、結局のところ20分ほど駅の中とまわりを散策してみたが、劇的な光景を確認することができなかった。時間帯が悪いのか既に大半を「対応済み」の状況なのかわからないけど期待通りの結果を得ることはできなかったわけだ。俺としてはとても残念に思う。
ところで、ここからは俺個人の意見になるけど、この「クスサン」を人間の都合でむやみに駆除することは道徳的に正しいことなのだろうか?と考えさせられた。
というのも昨今はやたらに「SDGs」という標語を拵えて環境保護の価値観をまるで「目玉商品」というか、サービスや商品のアピールポイントのように前面に押し出す企業や役人が増えてきた。その割には一方で「〇〇の大発生」だのを異常事態とみなし、それを排除しようとする活動は何の気なしに行われており、それを咎める企業や政治家はこれと言って存在しない。「街路樹」や「自然公園」なんていう蛾やその他の昆虫にとって都合のいいものを人工的に想像しておきながら、いざ何かしらが人間の生活圏内に侵入しようものなら「気色の悪いもの」「害虫」「異物」とみなし、容赦なしにその排除に尽力する。一部では「蛾対策」なんていうキャッチコピーを謳った商品を販売する商売も興っていたりする。
この事実に何か言葉として表現しがたい「矛盾」を感じてならない。「SDGs」も「環境保護」もすべてビジネスのためのキャッチコピーだったのだろうか?そして大量発生している「クスサン」達は、どうしても排除されなければならない「道理」があるのだろうか?
実際のところ、俺個人が「こうすべきだ」とか「こうしてはならない」みたいな一方的な決断を下せるような単純な問題じゃなくて、「永遠に検討されるべき人類の道徳のテーマの1つ」なんだと思う。
というわけで今回の事態は、俺にとって「本当の道徳とはなんなのか?」というのを改めて考えさせられるいい経験となった。
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